できれば、ない方がいい!アンダーカット
射出成形において、アンダーカットとは、金型から成形品を取り出す際に、型開き方向の動作で離型できない形状のことです。
型開き方向のみでの金型開閉動作では、金型のパーティング面に対して垂直に配置されていない凸、穴、凹などはどれもアンダーカット形状と言えます。
このような形状のあるパーツはたくさんあり、成形しやすくするために成形品の設計にちょっとした工夫をしたり、金型の機構を盛り込むことで対処できます。

これがアンダーカット形状!
図のような形状はアンダーカットになり、このままでは通常の金型開閉動作では離形が難しくなります。
パーティングラインを工夫しよう!変則パートの基本!

アンダーカットを処理する最も簡単な方法は、金型のパーティングラインの位置を部分的に変更することです。これは成形品の形状を変更をせず行えるので非常によく使う手法です。
しかし、CAVCOR(キャビコア)ぞれぞれで抜き勾配の設置が必要になるため製品外観にミスマッチができてしまうので外観品ではデザイン変更等の対応も必要になってくるかと思います。
抜き勾配で段差が出来てしまう!?デザイン商品にはあまり向かない
また、パーツの向きやパーティングラインの配置は、樹脂の流動などの要因も考慮して、決定する必要があるので、製品形状の変更の可能性が少ない、型開き方向に対して垂直に動くスライドも検討しよう。
スライドコア・傾斜コアで幅が広がる成形品の形状
スライドは一般的にスライドコアと呼ばれる部品で構成され、アンギュラピン等の部品によって片開き動作に準じて駆動する機構のことです。型締めじはロッキングブロックで固定され、位置が決まります。型開き時に固定状態が解放され、アンギュラピンによって駆動します。
スライドコアを使用することで、パーティングラインの制約がなく、製品形状に忠実に取り出すことができます。
外観品に対するミスマッチや抜き勾配等も気にすることなく設計できるため、あえてスライドコアを使用する場合もあります。
金型コストが高くなる!
ただ、構成が複雑になるので金型コストが高くなるため、できるだけスライドコアを使わなくて済むように製品形状で工夫されています。
食い切り合わせ(押し切り)

このような引っ掛け用途の爪形状は多くの成形品で見られます。先程の変則パートでは対処が難しい形状になるので、スライドコアで対応しないといけなくなるところですが、このような形状は非常に多く配置されていることもあるので、その都度スライドで対応するとコストが合わなくなってしまいます。
このような場合は製品形状を少し工夫して食い切り合わせで対処できます。

こうするとスライドを使わなくて済みます。穴の大きさは製品用途だけでなく、金型強度も考慮して検討して下さい。
また、食い切り面での合わせになるため、カジリや成形品のバリなどへの注意も必要です。
無理やり離形してしまう無理抜き!これもアンダーカット処理の一つ!
名前の通り、無理やりアンダーカット形状を離形します。離形時は成形品が一旦押しつぶされながら取り出されています。
制限がある!段差が大きいと無理抜きできない!
硬い材料だと変形しにくいため、離形時に破損したり、または離形できなかったりします。無理抜きを使う際は材料にも注意して下さい。
試作や小ロット向きの置き駒方式
製品形状の変更が困難な場合や複雑すぎてスライドのような機構では構成できない場合に使います。
置き駒は機構自体は複雑ではないので通常ではなかなか難しい形状の成形品でも対処できる場合もあります。
生産性は悪いが金型コストは抑えることができる!
ただ、1ショットごとに置き駒のセットをする必要があるため、人が付きっきりにならないといけません。そして、置き駒のセット時間等も入れるとサイクルが非常に長くなるため大量生産には向きません。
金型のつくりやすさはすごく大切です!
アンダーカットの処理方法にはいろんな選択肢があります。製品形状、金型構造、そして製作コストや生産数量等を総合的に判断し決定してください。
金型が作りにくいと結果的にコストだけでなく成形品の品質に影響してきます。設計段階で手を抜かず、十分に検討することで良い金型を作っていきましょう!