エンドミルとは

エンドミルは切削工具で、外周刃と底刃によって切削する工具です。切削工具の代表格としてドリルがありますが、ドリルは主軸(Z軸)方向への加工のみで、円形の穴あけをする目的に使われるのに対して、エンドミルは外周刃で切削し、軸に直交するXY方向に加工をする用途に用いられます。穴を広げたり平面を出したりできます。ドリルより柔軟な加工ができる反面、先端の切れ刃が中心部まで完全にあるわけではないため、ドリルのような穴あけ加工には適していません。しかし、ドリルなどで下穴を開けておくことで穴あけ加工にも対応はできます。また、エンドミルは外周刃と底刃がついているため、どのような方向にも加工ができる特徴を活かして三次元曲面など複雑な加工も行えます。そのためエンドミルは切削加工においてはなくてはならない工具の1つといえます。
エンドミルとドリルの違い
ドリルとエンドミルは一見よく似た形をしていますが使用用途はまったく異なる別の工具になります。ドリルは先端にのみ刃がついており、さらに角度がついていて尖った形をしています。エンドミルは先端にも刃がついていますが平坦で、そして側面にも刃がついています。ドリルは先端にのみ刃がついているため穴あけ専用の工具になります。エンドミルは先端も側面もどちらにも刃がついているためどのような加工もできるのがエンドミルです。ただし、エンドミルは先端刃の中心は刃がありませんので穴あけには適していません。またドリルは電動工具などに取り付けて加工もしますがエンドミルは基本的はマシニングセンタなどの工作機械に取り付けて加工します。
エンドミルの種類
スクエアエンドミル

スクエアエンドミルとはエンドミルの中でも一番シンプルな形状です。先端がフラットになっており平滑な円を出したり立壁を仕上げるのに向いています。しかし先端の角が立っているため摩耗しやすく負荷のかかる荒加工には向いていません。
ラジアスエンドミル
スクエアエンドミルと形が似ていますが先端の角にRがついています。Rがつくことで摩耗に強くなり切削性が良くなります。工具の消耗だけを考えるとスクエアエンドミルよりもラジアスエンドミルを使用する方がいいかと思います。ただし、先端にRがついているため、仕上がりもRがついてしまうのでそのあたりは考慮する必要があります。
ボールエンドミル

先端が半球形状になっているエンドミルのことです。3次元曲面の加工に適したエンドミルで複雑な形状の場合はボールエンドミルは欠かせない工具です。ただし、ボールエンドミルの中心の切削性は非常に悪いため底面の仕上げにはあまり適さないため工夫が必要です。
テーパーエンドミル
テーパーエンドミルとはスクエアエンドミルの側面刃に勾配(テーパー)がついたエンドミルのことを言います。立壁にテーパーがついている場合に使用すれば一度で仕上げることができます。テーパーの仕上げについてはラジアスエンドミルやボールエンドミルを使って等高線で加工することで仕上げることができますが、切込み量を細かく設定する必要があるため時間がかかってしまうためテーパーエンドミルを使って加工すると大幅に加工時間が短縮できます。
ラフィングエンドミル

ラフィングエンドミルとは名前のとおり荒加工専用のエンドミルです。基本的なエンドミルの形と大きく変わりませんが外周刃がギザギザしています。このギザギザの頂点だけあたるため切削抵抗が少なくなり重切削を可能としています。また、切子の排出も良くなりますし、切削油も切削面まで浸透しやすく切削性の良いエンドミルになります。しかし、加工面がギザギザした面になってきますのでラフィングエンドミルで仕上げ加工はできません。
エンドミルの材質
エンドミルの刃部の材料は用途に合わせて使用されています。材質は硬い順にダイヤモンド焼結体、CBN焼結体、セラミック、サーメット、超硬、ハイスなどがあります。
超硬
超硬合金はその名前のとおり非常に硬く(HRC73~80)耐摩耗性に優れています。高速度工具鋼と比べると、3倍程度の強度があります。なので、切削加工中の工具のたわみが生じ難いという利点から小径エンドミルに多く用いられています。ハイスエンドミルに比べて超硬エンドミルの方が高価ではありますが、その分加工スピードは断然速く、金型の加工においては超硬エンドミルを用いるケースが多いです。
ハイス
高速による発熱下でも切削が可能であることから、High Speed Steelと呼ばれておりJIS規格でも高速度工具鋼と言い、一般的にハイスと呼ばれています。高速度工具鋼(ハイス)は、1,200℃前後で焼入れを、550℃前後で焼戻しを行うことで64~69HRC程度の硬さを得ることができる鋼材です。超硬エンドミルが普及するまではそのほとんどがハイスエンドミルでした。
エンドミルの刃数
エンドミルの刃数は1~8枚刃がよく使われます。刃数が少ないとチップポケットが多くなり大きな切込みが可能になりますが、工具断面積が小さくなるので剛性が低下します。逆に刃数が多いと切子の排出量が低下するため大きな切込みができない代わりに工具断面積が大きくなるため剛性が増します。要するに精度のいる仕上げ加工は刃数の多いエンドミルを使用し、精度のいらない荒加工は逆に大きな切込みができる刃数の少ないエンドミルが適しています。
エンドミルを上手に使いこなそう!
エンドミルはその使用用途の広さからそれぞれに特化したエンドミルが存在しています。形状だけでなく材質によっても変わってきますのでそれぞれのエンドミルの特性を理解しましょう!