射出成形とは
射出成形とはプラスチックの加工方法の1つで、金型という金属の型に加熱して溶かしたプラスチックの材料を流し込んで高圧をかけ冷却して固めることで製品を成形する加工方法です。
射出成形は射出成型機という専用の機械によって行われます。ペレット状のプラスチックの材料をホッパーと呼ばれる投入口に投入します。
投入された材料はシリンダースクリューで加熱し溶かされ、ノズルから金型に注入されます。材料が投入された金型には高い圧力がかけられます。そして金型内部で冷却され固化することで製品が完成します。
射出成形金型の構造とは
射出成形金型とはこのようにプラスチック製品を製造する射出成形に用いられる金型のことです。
図のように一般的なものとしては金属製のプレートが重なりあった構造になっており、各プレートには役割があります。

①固定側取付板:成形機の固定板に取り付けるためのプレートです。
②固定側型板:金型の製品部分を構成する主要プレートです。キャビ側とも言います。
③可動側型板:金型の製品部分を構成する主要プレートです。コア側とも言います。
④スペーサーブロック:可動側型板と可動側取付板の間に取付けられ、突出し動作をするためのスペースを確保するためのブロックです。
⑤エジェクタプレート上:成形品を金型から押出すために動作するプレートのことです。エジェクタピンやリターンピンを固定する必要があるため必ず上下セットになります。
⑥エジェクタプレート下:成形品を金型から押出すために動作するプレートのことです。エジェクタピンやリターンピンを固定する必要があるため必ず上下セットになります。
⑦可動側取付板:成形機の可動板に取り付けるためのプレートです。
射出成形金型において最もシンプルな2プレート構造になります。
ランナー・ゲート方式
ランナー部は基本的には成形品としては不必要なため捨ててしまうのですが、その処理の仕方やゲート方式(注入方式)で大きく構造が変わります。
まず、ランナー部の構造によって分かれる大きな分類としてはコールドランナーとホットランナーがあります。
コールドランナー
コールドランナーは金型内でランナーが冷やされ、成形品と共に取り出されるランナー方式です。コールドランナーの代表的なものがサイドゲートとピンゲートです。構造的な呼び方として2プレートタイプと3プレートタイプと呼ばれることもあります。

サイドゲートは製品部とランナー部がつながって出来上がるのに対してピンゲートは製品部とランナー部が分離して出てきます。
製品部とランナー部がつながって出来上がるということは後工程で製品部とランナー部を切り離すゲートカットという処理が必要になってきますので手間が増えるということです。
一方、ピンゲートは製品部とランナー部が別々に出てくるのでゲートカットが必要ありません。よってピンゲートの方がメリットが大きいように感じますがデメリットもあり、金型内で製品部とランナー部を切り離すために金型の機構が複雑になってしまい金型費用が高くなってしまいます。
ホットランナー
これに対して、ホットランナーはランナーレスとも呼ばれる特殊な金型構造となります。ホットランナーは製品部の近くまで成形材料を溶かした状態で維持する方法で材料のロスが限りなく少なくすみます。
ただし、金型内部まで高温を維持しなければいけないので金型構造がより複雑でイニシャルコストが高くなります。製品形状や生産数量等を踏まえ総合的判断し金型構造を決める必要があります。
アンダーカット処理
次に金型構造に大きくかかわってくるのがアンダーカットの処理です。お茶碗のような形状の製品を成形する場合に金型はキャビ(凹)とコア(凸)の形状で成り立ちます。
このような形状の場合は金型が開くと製品を簡単に取り出すことができますが、マグカップのように取っ手がついている場合はそのようにはいきません。

これは金型が開く方向に穴が向いていないため当然のことです。こういった金型の開く方向とは違う方向に穴や出っ張りのある形状のことをアンダーカットといいます。
このアンダーカットを処理するためには金型の構造をさらに複雑にする必要がでてきます。可能であればアンダーカットはないことが望まれます。
アンダーカットの処理方法としてはスライドコアや傾斜ピン、無理抜き、回転機構等があり形状に合わせて選択されます。
成形品の取出し
製品の押し出し方法は基本的にはピンによって押し出す方法が用いられます。それ以外にはプレートを使った押出方法もあります。また、キャップ等のネジ形状のある製品は回転機構で押し出されます。
さらに押し出した製品を取り出す方法としてはそのまま落下させたり、ロボットを使ってチャックや吸着パッドによって取り出す方法があります。大量生産の場合は後者が一般的で、さらに画像測定などを用いた検査も同時に行う場合もあります。
金型の加工について
広く用いられる方法としてマシニングセンタでの切削加工が挙げられます。現在は製品形状の複雑化もあり、2DCADデータや3DCADデータをもとに加工データを作成し、加工するのが主流です。NC加工と呼ばれます。昔はフライス盤やボール盤を用いて職人の技で加工していましたが、今では一部の加工を除いてNC制御がついた加工機で加工されています。職人さんが作っていた金型が今では加工データのプログラマーや工作機械の機械オペレーターによって作られるものに変わっております。
マシニングセンタ以外には旋盤、研削盤、放電加工機、ワイヤー放電機が金型を作る際には広く用いられています。金型を作るにはミクロン単位の精度が求められますのでどの機械も非常に高額な設備となります。
金型の費用はどれくらい?
金型の製作には高額な設備投資もあるためコストがかかります。安価な簡易金型でしたら40万円程から制作できるものからホットランナーを使った32ヶ取の金型クラスになると1000万円を超えてきます。一番多いのが100~200万円の価格帯ではないでしょうか。このクラスはサイズ的にもいろんな商品に使われているものがあります。
金型構造は十分検討しましょう!
金型はやはり高価なものになります。金型の仕様、構造、加工方法、十分検討すれば大きくコストダウンも可能です。製品コストも抑えつつベストな選択をしたいですね。