エジェクタピンとは
射出成形金型におけるエジェクタピンとは成形品を金型から押し出し、取り出すために用いられます。一部を除いて射出成形金型のそのほとんどで使用されている部品です。形状、材質、大きさ等、種類は豊富でメーカーでさまざまな規格の商品が販売されています。
エジェクタピンの種類
エジェクタピンの形状にはいくつかの種類があります。丸ピン、角ピン、スリーブピンなどがよく使用され、メーカー規格品も多数存在しますので柔軟に対応できます。材質にも種類がありSKH51、SKD61、SUS440C等があります。小径のピンではSKH51がよく使用されています。また、あまり使用されませんが製品形状に合わせた異形のピンを使用する場合もありますが、その際は特注品のピンになるためコストが非常に高価になってしまいます。
丸ピン

もっとも一般的なエジェクタピンです。細長い円筒形状にツバがついたものが一般的です。配置に際しても特に制限がないため自由度が高く好まれて使用されています。また、他のエジェクタピンと比較しても安価で、丸ピンが配置できるのであれば優先して配置すればコスト削減にもつながります。
角ピン

角ピンとは名前の通り四角のピンです。正方形よりもどちらかというと長方形の場合が多く、リブ底など丸ピンの配置では不安な場合に用いられます。角ピンはリブ底などの狭い範囲を効率的に押し出すことができるため離形抵抗が大きい場合には最適なエジェクタピンです。ただし、丸ピンよりも角ピンの方がカジリが発生しやすく、生産中のトラブルにつながる可能性があるので、あえて角ピンをさけるメーカーもいます。角ピンは摺動面が面あたりするのとエッジ部に負荷が集中しやすいため、摺動面が線あたりになる丸ピンと比較するとそのリスクは避けては通れません。ですので、クリアランスや材質、表面処理などの対策をしっかり講じることが非常に大切になってきます。
スリーブピン

丸ピンの真ん中に貫通穴が空いたピンをスリーブピンといいます。成形品で丸穴が空いている形状だと金型では細長い形状が立ってくるため、離形の際にその形状に抱きつくため離形抵抗が大きくなります。そのような場合にその細長い形状の周りを押し出すためにスリーブピンが用いられます。そして、その細長い形状にはセンターピンが使用され、スリーブピンはセンターピンとセットで使用されます。
異形ピン
丸でもなく角でもない、製品形状合わせた形状のピンです。丸ピンや角ピンとは違い、異形状のため研削ではなく、切削加工や放電加工が必要になる場合もあり非常に高価なピンになります。丸ピンや角ピンがどうしても配置できない場合に用いらることがほとんどです。
エジェクタピン配置の際の注意点

エジェクタピンの配置の基本は全体にバランスよく配置することです。バランスが悪いと成形品がまっすぐ金型から離形できず変形したり、場合によっては金型が破損します。あとは離型抵抗が大きいところは重点的配置することでおよその製品では問題なく取り出すことができるかと思います。
エジェクタピンを配置してはいけない場所は?
基本的には意匠面(製品の外観)には配置しません。意匠面に配置してしまうと製品外観にエジェクタピン跡がついてしまうので見た目が非常によくありません。ただし、製品外観上問題なければ配置する場合もあります。(例:丸い形状に丸ピンを配置した場合は見た目に違和感が少ない等)
あとは機能面にもエジェクタピンはできるだけ避けられます。摺動面やシーリング面など段差やエジェクタピン跡があることによって不具合を起こす可能性がある場所です。ただし、高精度の加工によって段差をなくすことも可能ですので場合によっては配置されることもあります。
ガス抜き対策にもなる?
エジェクタピンの配置に際して別の目的で配置されることもあります。それはどのような目的かというと、ガス抜きを目的とした場合です。リブ底など離型抵抗を考慮することはもちろんですが、離型と合わせてガス抜きも考慮し配置されることが一般的です。リブ底はどうしてもガスがたまりやすく成形不良が起きやすい場所です。入れ子の分割やコアピンの配置などでガス抜き対策はされますが、一番シンプルで簡単な方法がエジェクタピンの配置です。上手にエジェクタピンを配置すれば過剰に工程を増やす必要もなく、ガス抜き対策が可能です。
エジェクタピンが戻らない?折れる?対策は?
金型動作の中でエジェクタピンが戻らないことがあります。生産中に起これば致命的な金型破損につながるトラブルです。一般的にはエジェクタピンのカジリによって起こる事案です。
カジリにはいろんな原因がありますが多いのは凝着摩耗。これは同材質どうしでは非常に起こりやすく、科学的な結合によって起こるため、材質を変えないかぎりは継続して起こりうるカジリです。
次にアブレシブ磨耗も比較的多いカジリの原因です。これは硬い材料が柔らかい材料を削ることによって出てくる粒子が原因で起こります。加工面が荒かったり、角ピン等の角がキレイに合っていなかったりすると、その部分が削れて粒子が発生しやすくなります。どのような原因でも接触することでカジリは発生しやすくなりますので、クリアランスを大きくすることでもカジリの発生を抑えることができます。
■対策方法
- 型材とエジェクタピン材は同じ材料を使わない。
- 加工面の面粗度はキレイに仕上げる。
- 角合わせは慎重に行う。できればRをつけておけばなお良い。
- クリアランスを大きくする。
- 焼き入れや窒化処理を行う
射出成形において必ず使うエジェクタピン。その分トラブルの原因になるケースも数多くあります。トラブル後の対処も視野に入れて金型設計ができるといいですね。